「ティッキー…」
兎が…もとい。ラビが。
とても、とても。悲しげな瞳でこっちを見上げて来た。
そんな目で見んなよ。
俺はそう言って、再び、先程まで目を通していた本に視線を落とす。
ラビは、「ぇ…」と、期待を裏切られた、というような声を出した。
おいおいおい。よく言うよお前。
お前が本読んでるときにいくら俺がちょっかいかけたって、構ってくれねーじゃん。
なんて思ったけど、声にはしなかった。
声になんてしちゃったらラビが泣きそうな顔になるのは目に見えてるしね。
いや、泣くなんて思ってねーけど。
黙り込んだ俺が、ほんとは本に羅列された字すら追えてなくて、ラビのことばかり考えてるなんて思いつきもしないだろうラビは、俺の沈黙をどうやら悪い意味で取ったらしい。
さっき思ったことは口にはしていないけど、自らそれにたどり着いたのだろう。
さっき想像したとおりの、眉を八の字にした泣きそうな顔になった。
ああ、俺って案外愛されてんだ。
「ティキ、」
と小さな声で再び俺の名を呼んだ。
「やめて、本読むの…」
相手してよ。
言葉の裏に隠されたその意味を汲み取って、俺はさも、
仕方ないな。
なんて雰囲気をかもしながら(本当はすごく、今すぐ踊り出してもいいくらい嬉しいのだけど)本にしおりをはさんでぱたん、と閉じて。
その本を横に置いたらラビの顔を正面から見つめた。
今は降りているその綺麗な赤の髪の毛に触れて、微笑んだ。
やっと安心したのか、ラビも微笑む。
そして俺は、すきだよ。と囁いて、ラビのすこし照れの色を含んだ瞳を隠す瞼にキスをした。
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ティッキーはラビのこと大好きなのです。ラビもね