なんでもない日常
「ラビ」
「・・・ティキ・・・せんせい」
誰もいない廊下。
ティキは、一人歩くラビを呼び止めた。
「誰もいねーし、「ティキ」でいい」
言いながら、歩いてラビの横に並ぶ。
「・・・馬子にも衣装。って感じ」
そう言って、ラビはにやり、と笑った。
「うるせ。まあ、とりあえず卒業おめでとう?」
「何で疑問系」
小さく笑いながらラビは言った。
「泣いた?」
ラビの目許に手を寄せて、ティキは聞く。
「ちょっとだけ。」
ラビは、先ほどクラスでの別れを済ませてきたところだった。
三年間、さまざまなことをともにした仲間達。
泣く気などなかったのだが、いざ当日になるとどうも教室の空気がそうはさせてくれなかった。
ああ、泣いちゃうかも、なんて思ったときには時すでに遅し。
涙が一滴、頬をつたった後だった。
「ありがとう」と皆に伝えたかった。ありがとう、ありがとう。
最後に、ラビは仲間達に、「本当にありがとう」と、二滴目の涙とともに、だけど、笑顔で伝えてきたところだった。
「このあとは?」
どうすんの?
とティキが聞く。
「んー、とりあえず、校門で皆とまたお別れ済ます。」
「そのあとは?」
「ユウと二人で打ち上げしてから、クラスの打ち上げに参加。」
「夜は?」
「クラスの打ち上げがそのままオール」
「明日は?」
「打ち上げ後の二日酔いでダウン?」
「明日の夜。」
「何も。」
「じゃあ、俺の家おいで。卒業、祝ってやるよ」
「いいのかよ。教師が一人の生徒だけ特別扱いして」
「いいんだよ。もうただの恋人なんだから」
「あっそ。うん。じゃあ、お邪魔する。」
「ああ、待ってる」
「んじゃ、リナリーたち待ってるから!」
と、小走りでラビは駆け出した。
「ラビー?」
「何?」
数メートルはなれたところでティキがラビを呼ぶ。
ラビは立ち止まって振り向いた。
「何か言うことは?」
「あー。うん。お世話になりましたありがとうございました。」
「うん。」
「それと、」
「うん?」
「バイバイ。今までのなんでもない日常」
そして、ウエルカム新しい日常!
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卒業ネタ2。
この後、昨日更新した卒業ネタに続きます。