熱いコーヒーを一杯
ことり、小さな音に目を上げれば、まず見えたのは、ふわふわと湯気が立ち上がるコーヒー。
そのコーヒーの後ろに見えた、黒いコート。
だれか、と目を更にあげれば、見えたのは人好きのする笑顔を浮かべた赤い髪のエクソシストの少年だった。
「お疲れさん。」
書類でうまった部屋を、ソファの向きへ足を進めて、ソファに座ると、彼は、一つ、そう言った。
「あ、リーバーから伝言。『そのコーヒー一杯分だけ、休憩していいですよ』だってさ。」
そういって、彼は、ちゃっかり持ってきていた自分の分のコーヒーを口に含む。
こくり、とそれをのどの奥に流し込むと、
「コムイ?」
と名前を呼ばれた。
書類を避けて、コーヒーのお礼とともに、返事をする。
「何か、用があったのかい?」
「いや、別に・・・。」
少し、目を曇らせて目を伏せた彼は。
ああ、きっと、何か悩んでいるのだろう。
そう、思ったけれど。
僕では、どうにも出来ない、悩みかもしれない。
それならば、今は。
まだ、何も言わずに、ただここに、共にいるだけでもいいだろうか。
しばらくの沈黙。
熱くて、始めは口をつけるのも戸惑ったコーヒーは、すでにもう冷めて、
後一口でなくなってしまう量になっていた。
彼は、ラビは。
すでに飲みきったらしく、ただ黙ってそこに座っていた。
最後の一口を飲みきって、ラビに問う。
悪いけど、これを持って行ってもらえないかな。
すると彼は、さっきまで曇らせていた瞳から、曇りを取り除いて、また笑顔で。
「そのために待ってたさ」
言って、その場を立って。
カップを取りに近寄ってくる。
ああ、彼に、何か言ってあげる事はできないだろうか。
「ラビ、」
「ん?」
「だいじょうぶ、だよ」
何が、かわからないけど。
これが、彼に救いの言葉になればいい。
「・・・」
黙ってしまった。
少し、驚愕の色を見せたその表情は、でもすぐに、変化を見せた。
何か口を開きかけて、だけど、泣いてしまいそうな表情になって、俯いて。
再びあげた顔に見えた表情は、笑顔。
「コムイ、さんきゅ」
んじゃ、ちゃんと仕事しろよ〜?と、言って、そのまま部屋を後にした彼は、
何か肩の荷が下りたように見えた。
いや、そう思いたいだけかもしれないけれど。
彼等の悩みは、僕にはどうすることも出来ないから。
僕は、だから、少しでも彼等の助けになれるように、とただ、ただ。ここで願うしか出来ないんだ。
===================================================================
んー。コムイさん難しいなあ。
てか、ナンダコレ。
ラビは、誰とも話したくなかったけど、一人にもなりたくなかったんですよ。
コムイさんなら何か察してくれるかな、と逃げ場所にここを選んだわけです。
・・・みたいな話を書きたかった!(爆