ちいさなわがまま





「お、そろそろやばいかもな。オレ帰るな」

例の如く、能力を駆使してラビの教団の部屋へと転がり込んでいたティキは、そらに浮かぶほのかに光を落とす月の位置を見て言った。

「あ、ほんとさ。もうこんな時間なん?」

と、ラビ。

「ああ。あっという間だな。」

言いながら、ティキは窓に手をかける。
名残は、見せなかった。
ラビも、あえて普通に振舞いながら、ティキを見送る。

そして、普段ならば、そのまま。

そう、普段ならば。



「ラビ・・・?」

「ん?何・・・?早く帰るさ」

とても驚いたように、ラビを振り返ったティキに、ラビは訝しげに問う。

「え・・・『何』って・・・その手は何?」

少し、ほんの少しだけ困ったように、(ほとんどは喜びを携えて、)ティキは自分の服を指差した。

「・・・っ!?あっ、ちが・・・違うさこれは・・・!」

ティキに指摘された、ラビの手は、しっかりとティキの服を掴んでいた。おそらくは、無意識に。
まるで、「行かないで」とでも主張するかのように。


恥ずかしさのためか、顔を真っ赤にしてラビは必死に弁明する。

そんなラビをとてもほほえましげに見つめながら、しかしティキは少し意地悪な質問をした。


「言い訳はいいからさ、何か言う事は?」



にっこり。とても嬉しそうにティキは笑いながら聞く。

ラビは、どこか面白くなさそうに、小さく口を開いた。




「・・・もうちょっと、いてほしい・・・デス」



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げほっ・・・はあ・・・余りにも偽者すぎてどうしよう・・・。